佐賀県諸富町と福岡県大川市の境界を流れる筑後川に、昭和62年に廃線になった旧国鉄佐賀線の鉄橋“筑後川昇開橋”が残されています。昇開橋とは、高さのある船舶などが橋下を通るときに、桁の一部がエレベーターのように昇降する構造を持った橋です。筑後川昇開橋は全長507メートル、そのうちの24mの橋桁が両側にある高さ30mのタワーの間で昇降します。昇降する橋桁は重さ48tあり、ワイヤーロープで20tと28tの錘につながれモーターにより駆動する仕組みです。橋桁は最大で23mの高さまで持ち上がるそうです。
昭和10年に竣工したこの昇開橋は、昭和62年の鉄道廃止と同時に撤去されることになっていたそうですが、地元で地域発展のシンボルとして保存運動が展開されました。また自治体の協力もあり平成8年には筑後川昇開橋観光財団が設立。昇開橋は“筑後川昇開橋遊歩道”として再生され、第二の人生(橋生?)を送ることになります。廃線跡の橋が歩道や車道に転用される例はよくある話ですが、昇開橋となるとそうはないはず。しかも、驚いたことになんと動態保存なのです。昭和10年に造られたにもかかわらず、現在もちゃんと稼動しているのにはちょっと驚きました。昇降部分を固定してしまい“普通の橋”として利用すれば、維持に掛かるコストは抑えられるのでしょうが、動態保存となると維持管理は大変なことだと思います。ん?よく考えると昇開橋を保存するとなると動態保存以外に道はないですね。今でも橋の下を船が行き交う訳ですから、そのためにも橋桁を昇降し続けなければならない、ってことではないでしょうか。現存する可動橋としては国内最古のものといわれており、平成15年には国の重要文化財に指定。近代土木遺産のAランクにもなっています。
上の動画は上昇時のもの。よく見ないとわからないくらいにゆっくり動いています。月曜日以外の午前9時〜午後5時の間毎時0分に降下、毎時35分に上昇するとのことです。日没後は美しくライトアップされています。
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