マップ 報告書 掲示板 リンク 雑記帳
このサイトについて お問い合わせ
 
曽木発電所遺構 No.01
調査報告書一覧 > 報告書 No.01 / No.02 / No.03

調査実施:2005年3月・6月 報告書作成:2005年6月26日
       

 まず写真を見て欲しい。鹿児島県大口市にある曽木発電所遺構は、九州の数ある産業遺構の中でも非常にインパクトが強い物件ではないだろうか。その姿は発電所跡や廃墟などの表現より「遺跡」というに相応しいと思う。更に特異な点として、その全体像を見ることができるのは1年にたった2〜3ヶ月間のみということだ。実はこの曽木発電所遺構はダム湖の底に残る建物で、ダムの水位を下げる5〜7月のみ全体が水面上に現れるのだ。ダム湖の底という周辺の風景も、この発電所遺構を一層引き立てているように思う。
 


曽木発電所遺構との出会い
 この曽木発電所遺構の存在を知ったのは最近のことだ。熊本県坂本村の深水発電所で、思いのほか満足できる調査が行えた私は「水力発電所だったら山間部に古いものが結構残っているのではないか」と考えた。そこでWeb上で古い発電所に関する情報を検索してみると、あっさりと「曽木発電所遺構」に辿り着いたのだった。その時も同じような写真を見たが、その遺跡というに相応しい姿に一瞬にして魅了された。さらに面白いのはその特異な姿や環境だけでなく、「曽木発電所」が持つ歴史だ。その歴史も調べつつ、まずは現地調査だ。3月末に現地へ行くことが出来たが、水没している姿を写真撮影しただけで終わった。今回の報告書に使用している写真は、6月のダム湖の水位が下がったときを狙って撮影しに行ったものだ。

現地調査

 鹿児島県大口市に流れる川内川には、東洋のナイアガラとも言われる「曽木の滝」がある。高さは12mほどだが幅は200m以上にもなり、水量も多く迫力のある瀑布を見ることができる。曽木発電所遺構は、「曽木の滝」下流の約1.5kmの川内川北岸に位置している。さらに約8.5km下流には鶴田ダムがあり、そのダム湖によって曽木発電所遺構は1年の大半を水に浸かることになる(左写真の左奥に見えるのがダム湖)。発電所遺構の対岸は公園としてきれいに整備されており、遺構全体が見渡せることができる高台には案内パネルが用意された展望所が作ってある。

 
 
遺構は地上に姿を見せているものの…

 さて、一度3月に展望所から水没した曽木発電所遺構を撮影したが、今回は遺構全体が地上に現れる6月を狙ってやって来た。まずは前回と同じく展望所から全体を撮影して、その後に対岸へ渡り、発電所遺構に近づいて撮影をしたい。そう考えて展望所へ向かったが…。川内川が作る谷には建設機械が動く音が響き渡っている。状況が飲み込めないまま展望所についてみると…!遺構の周りにショベルカーが入っているではないか!一瞬遺構が撤去されているのかとも思ってしまったが、そうではないらしい。状況をよく見てみると遺構の周辺へ堆積した土砂などを取り除いているだけのようだ。このページの上部1枚目の写真をよく見ていただくと、遺構奥右手に2台のショベルカーを確認できると思う。遺構の湖面側にはフェンスが作ってあるが、遺構自体には何の手も加えられていないようだ。一体なにをやっているのかと思いながらも、とりあえず展望所からの写真撮影は終えたので、対岸へ渡り発電所遺構へと向かった。このときは工事中だが写真を撮影するだけだから、邪魔にならないようにすれば大丈夫だろうと思っていたが…。

「板木尾地区発電所跡整備その他工事」
 対岸へと渡り発電所遺構のあると予想される地点へ向かう。湖底へ降りて行く道の入り口は簡単に見つけることができたが、その途中で工事の現場事務所があり、道はゲートで閉ざされていた。知らない振りをしてゲートを通過する訳にもいかなさそうな雰囲気である。とにかく工事事務所に人が居たので事情を説明して立ち入りの許可を求めた。しかし「工事は始まっており、危険ですので許可できない」とのことだった…。遺構の周辺は釣り人が多く訪れるところでもあるが、工事の期間中は事故防止の為に関係者以外の立ち入りを禁止しているそうだ。折角なので工事について聞いてみた。工事名は「板木尾地区発電所跡整備その他工事」というもので、曽木発電所遺構(煉瓦の構造物)の保存を目的とした修復と補強を行うものだという。確かに水没を繰り返す為に傷みも激しいだろう。今まで残っているのが不思議なくらいだ。補強の方法は簡単にいうと鉄筋とコンクリートで遺構の裏側(建物の内側)を覆うらしい。むむ。それだと今のありのままの姿はもう見ることが出来なくなってしまうではないか!確かに保存の為の補強だが、やはり本来のありのままの姿を記録しておきたい。今ならまだ間に合う。どうにかして写真撮影が出来ないものか!再度お願いするも丁寧に断られた。無理もない。突然やって来られても現場では許可は出せないというのも納得できる。仕方なくこの日は家路についた。しかしどうにかならんものか…。

 

次回なんと!

つづく