熊本県宇城市三角町にある三角西港は来年で開港120周年を迎えます。この港は明治時代の三大築港の中のひとつで、明治政府の殖産振興政策のもと明治17年から3年の歳月をかけ建設されました。港の周辺も都市計画によって整備され、警察署から宇土郡役所や裁判所なども同時期に建設されています。そしてそれら明治の都市計画で作られたものが、美しい石組みの埠頭と共にほぼそのままに残っているのがこの三角西港の最大の特徴です。
港から歩いて数分のところにあるこの建物は、明治35年に宇土郡役場として建設されました。大正15年からは三角町役場として使われ、昭和32年より三角町立海技学院の校舎として使われています。現在も「宇城市立九州海技学院」として3〜6級海技士や各種免許の講習が行われています。
海技学院の近くにあるのが明治23年に開設された簡易裁判所。木造平屋建ての立派な建物で、裁判に関する書類や資料を収める煉瓦建築の倉庫も併設されています。
周辺には他にも当時の建物が残っており、それらは各所に立てられた案内図・説明板によってわかりやすく見て回ることができます。そのような中、案内図にも載っていない古い建物を発見しました。しかも旧簡易裁判所からすぐのところにです。軒先の飾りや全体の造りからして、結構古い建物のよう。また建物までのアプローチには煉瓦も使われており、ただ古いだけの建物ではない様子。しかし説明板もないので正体は謎です。
よく見てみると洗濯物が干してあったり、周りに花が植えてあったりするので住宅として使われているようです。と、ちょうど一人のおばあちゃんがその建物の中に入っていくではありませんか。挨拶をし事情を説明して、この建物について聞いてみました。おばあちゃんはよく知らないとのことでしたが、中からおじいさんが出てきて親切にいろいろと話をしてくれました。それによると、この建物は裁判所に勤める司法書士(職員?)の住居として、旧裁判所と同じ明治期に建てられたとのこと。裁判所が閉鎖されたあとに民間に売られて現在に至っているという話でした。なるほど、ただならぬオーラを出している訳です(笑)。しかし現在も個人の住宅として使われていますので案内図には載らなかったのでしょう。住宅は港より一段高い山側にあり、港と海が見渡せる眺めの良い場所にあります。
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