鹿児島県大口市に、わずかな時期だけその全容を見ることができる煉瓦建築の遺構があります。下流に鶴田ダムがあるためで、1年の大半はダム湖に水没。夏の間だけダム湖の水位が下がり、荒涼とした湖底にその姿が現れますが、まるで“古代遺跡”のような雰囲気です。
この遺構は、近隣の金山・鉱山への電力供給を目的に設立された曽木電気株式会社の第二発電所跡です。曽木電気は野口遵(のぐちしたがう)によって明治39年に設立。明治41年11月に完成した第二発電所が、現在もこのような姿で湖底に残っています。
曽木電気は明治41年に、余剰電力でカーバイトの生産に着手。熊本県の水俣にカーバイトの工場をつくり、日本窒素肥料株式会社を設立します。この会社が現在のチッソ株式会社や旭化成、積水化学のルーツになるわけですから、この曽木電気の遺構は日本の近代化学工業のモニュメントといえるものではないでしょうか。詳細は以下の報告書をご覧ください。 |