本調査
午前11時40分にB地点到着。乗ってきたバイクを道路と水路が交わるスペースに停めた。靴紐を締めなおしてサージタンクへ向けて水路跡を歩き始める。しばらくは倒木こそ多少あるものの藪もなく非常に平坦で歩きやすい。地図では約300mほどで一つ目のトンネルに到達する。足元は登山道のような踏み跡が続いてはいるが非常に不明瞭な部分もあり、相変わらず水路の遺構などは見あたらない。手元のGPSではひとつ目のトンネルの地点に到達した。しかし水路もトンネルも見あたらない。「ひょっとして全て埋め戻されたのか?」とも考えたが、こんな山中ではそんなことする意味もないだろう。冷静になって自分が立っている弱々しい踏み後の続く先を見てみる。今までほとんど水平を保っていた道が突然20mほどある稜線へ向かって登っていた。GPSと手元の地形図、実際の周りの地形を見比べると水路は目の前の斜面を突っ切っているのは明らかだ。少しだけ予測はしていたが「トンネル」は水路であって人が通れる代物ではないようだ。方角が一致しているので踏み跡にしたがって稜線へ登った。
「平坦じゃなかったなあ」なんて思いながら稜線を越えて下っていると左手に平らな場所が見えてきた。そう水路跡だ!その水路跡が山の斜面へ繋がる部分に…あった!トンネルだ!しかしその規模はトンネルと呼ぶにはかなり小さく、まさしく「水路の穴」だ。
写真でデイバックが写っているが比較して小さな穴がお分かりいただけるだろう。内部もほとんど埋れている。しかし地形図通りに水路跡がトンネルを使っていることが分かったので少し安心した。
ここからあと100mほどで次の目的"調整池"である。池には従業員が詰めていたというから、何かしらの遺構が期待できる。そんなことを考えながら歩いていると…
ん?道がハッキリしてきたぞ。おや?おお!ここに来て初めて水路の正体が現れた!
なんとコンクリート製の水道管ではないか。直径はおよそ60cmくらいであろうか。見事に苔むして緑のパイプとなり、森の中へ延びていた。私はずっと上部が開放された水路をイメージしていたが、実際はコンクリート製の水管だったのだ。水管だとB地点周辺の景色も取水口周辺に水路がなかったのも納得できる。
地上にハッキリと姿を現したコンクリートの水管の脇に沿って歩き進めると、藪の間から窪地が見えてきた。池だ。思ったとおりに何らかの構造物もある。調整池は底に浅く水が残る程度で、ほぼ枯れている状態だ。地形を見ると、谷に堰を作って幅約20m奥行約4、50mの池を形成しているが、一見するとただの窪地の水溜りにも見える。今まで辿ってきた水管がダイレクトに池に注ぐようになっているが、小さな穴を開けてそのほとんどをコンクリートで塞がれていた。
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