マップ 報告書 掲示板 リンク 雑記帳
このサイトについて お問い合わせ
 
旧深水発電所(旧西日本製紙株式会社) No.04
調査報告書一覧 > 報告書 No.01 / No.02 / No.03 / No.04 / No05完

調査実施:2005年3月 報告書作成:2005年5月10日
       

 地図上で2つ目のトンネルを通過したということは、残る調査対象はヘッドタンクのみである。距離は約1.4kmしかないが、調整池から八号隧道出口付近まで500m歩くのに30分もかかっている。正直倒木とシダの藪にウンザリしてきたところに、自分が歩いているルートとほぼ並走して100mほど下の斜面に林道が走っているのが見えた。地図には記載されていないので新しい林道のようだ。調査を開始したB地点の100mほど集落よりに林道の入り口があったが、おそらくその道だろうと地図上では想像できた。「ひょっとしたら、あの林道がヘッドタンクまで続いているのかな」などと考えもしたが、やはりここまできたので水管に沿ってサージタンクを目指したい。もちろん帰りは適当なところで林道に下れば楽に歩けそうである。帰りの逃げ道を確保できたこともあり、気力は復活した。この時点ではヘッドタンクのことしか考えていなかったが、まさかの大発見に身を震わすことになろうとは予想もしていなかった。

 地図で水路が鞍部を横切る部分がある。「ここもトンネルかなー」なんて考えていたらやはりそうだった。看板こそないが「九号隧道」になる。この辺りは踏み跡がハッキリ付いており、地籍調査票なる杭と目印のテープがあちこちにある。道も平坦になりかなり楽だ。と、その道が稜線へと登り始めた。水管は地中に埋まって見えないので分かり辛かったがまたまたトンネルのようだ。順序として「十号隧道」だ。稜線を越え再び平坦な道に戻った所に、水管の空気抜きのパイプが顔をだしている。脇に短いコンクリート製水管の一部を見つけた。おそらく補修用などに使われたのだろう。人力でここまで運ぶのは大変だろうなあ…。
 

      
 
 突如、水管だけが真っ直ぐに伸び周りは低くなっているように見える場所に出た。踏み跡も水路の脇から下ってしまっている。ん?こんな看板があった。「水管橋?」とりあえず踏み跡の続くまま歩くと…!なんだこれは!?
 
 
 こんな山中にこのような遺構があるとは!まったく予想していなかった発見に一人山中で興奮状態。うーん!やはり実地調査は面白い。さて、冷静になって周囲の様子を見てみる。ここにきて、ほぼ稜線をトレースするように設置されている水管だが、鞍部(稜線の低い部分)を越えるのに水管橋を作ったようだ。この水管橋は高さ4〜5mほどで、全長約20mある。鉄筋コンクリートラーメン構造だが、コンクリートの質はあまり良くなさそうである。所々コンクリートの剥離も見受けられ中の鉄筋が錆びている。私は建築物については全くの素人だが、鉄筋コンクリートとは言え随分細い橋脚に思えた。しかし、支えるべきものは水管とその中の水だけなので十分なのだろう。実際に大正時代から壊れず残っている訳だし…。

さらに100mほど進むと2度目の水管橋が木々の間から姿を現した。前回の水管橋と同じ構造だが、橋脚の下に大きなコンクリートの土台があり、距離も高さも随分と規模が大きい。地面から水管までは8〜10mほどはあるように見える。全長も長く30〜40mはあるようだ。こんな山の上にこのような遺構が残っているのは非常に面白い。しかも84年も前に作られたのである。そんなことを考えてながらふとGPSに目をやると随分サージタンクの近くまできていることに気が付いた。
 

  


 実はこの調査の2週間後に土木学会が発行している「日本の近代土木遺産」という本を購入した。この本は現存する土木構造物を2000件選出し、リスト化したものだ。なんと、そのリストに深水発電所と共にこの水管橋が「ランクC」ながら掲載されているのである。なんだが自分だけの発見のような気がしていたが、上には上がいるもんなんだねえ…、ってプロの方々がすでに調べていたのだ。