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日窒鏡工場跡・小千代橋 No.04
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調査実施:2005年10月 報告書作成:2006年2月23日
       

日窒鏡工場跡地

 小千代橋を後にし、鏡町中心部の西側にある日窒鏡工場跡地を目指す。住宅が密集した中の狭い道路を鏡川に沿うようにして進むと、唐突に川幅が広くなった場所にでた(地点)。机上調査で見つけた鏡工場に隣接する“怪しい水路”だ。日窒鏡工場鳥瞰図では船が沢山停泊していたが、現在も写真の様に小さな漁船などが係留されている。また、1973年の空撮写真では桟橋があった工場跡側の岸壁には、一部埋め立てたのであろうか、きれいな公園が整備されていた。以降1973年撮影の空撮写真にて位置関係を説明していく。
 


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当時の痕跡はあるのか


 早速工場跡と思われる敷地内に入ってみよう。敷地の東側(地点)に工業団地としての正門がある。現在、この地は31もの会社が入る“鏡町郷開工業団地”となっており、区画整備が行われている。やはり大正時代の日窒鏡工場の痕跡などある訳ないか…。そう思いながらも車で工業団地内や周辺を回ってみた。するとたった一つだけだが、とても古そうな倉庫を地点に見つけることができた。まだこの建物の所有者へ取材をしていないのでハッキリと断定できないが、おそらく日窒時代のものではないだろうか。根拠として、大正時代に撮影された日窒鏡工場の写真に同じ形状の建物が写っているのだ。その写真自体は著作権の都合で掲載できないが、日窒鏡工場鳥瞰図にも同じように描かれており、工場敷地内での位置もほぼ一致する。また、1973年撮影の空撮写真にもその存在を確認できる。後日この倉庫を所有する会社に電話で取材を申込んでみたが、やんわりと断られた。近くからの写真撮影だけでもとお願いするも、これも断られた。まあ、私個人の趣味の範囲での調査なので、人様に無理言って迷惑を掛けることはできない。と、言うわけでこの古い倉庫に関することは残念ながら何も分からないし、これ以上調べられない。
 

  
 
 工業団地内とその周辺をグルグルと回ってみたが、他に日窒時代の痕跡を見つけることはできず、やはり80年近い時間が流れていることを実感した。
 さて、再び郷開工業団地の正門へ戻ってきたのだが、実はこの正門、立派な“日窒時代の痕跡”なのだ。正門は地点に当たる部分で、引込み線が工場敷地に入る入口になる。そしてこの正門からJR有佐駅方面へ延びる道が、今回地図上で見つけた“引込み線”になるのだ。それでは工場跡地から引込み線を辿って有佐駅へ向かってみよう。

 工場から少し離れ、地点から振り返って正門を見てみる。緩やかなカーブを描いているのは空撮でみる軌道と同じだ。真っ直ぐに工場に入っている線も見ることができるが、おそらく工場内で軌道の位置の変更でもあったため、このようなカーブができたのだろう。

 さて、少し先へと進み地点あたりに来ると、ちょっと変わった道路になる。右写真のように2本の道路が水路とフェンスを挟み平行に走っているのだ。一段上がっている右手奥の2車線道路が、現在メインになっており交通量も多い。対照的に左手手前の低い方の道路は舗装も荒れており、田んぼへ面していることもあり農道のようになっている。このような道路になった理由は、1973年の空撮写真を見れば一目瞭然だ。拡大図を見ると引込み線の軌道に沿うように道路が1本あるが、その道路が写真手前の農道にあたる。そして現在2車線道路になっている方が軌道跡だということがわかる。
 

    
 
 このように立派な“廃線”跡なのだが、廃線関連の書籍にも紹介されておらず、意外と一般には知られていないのかも知れない。軌道跡の道路はいくつか水路などを横切ったりするので、橋台や鉄橋などの軌道の痕跡を注意深く探してみたが、見つけることが出来ないままJR有佐駅が近づいてきた。しかし、もう少しで有佐駅という地点で軌道跡の道路は途切れてしまい、鹿児島本線敷地までは写真のような藪になっていた。引込み線が鹿児島本線に接続されたであろう地点は、今現在もこのように空き地となっており、当時の様子を想像できる。奥に見えるのが有佐駅のホームだ。
 
    
 
 現地調査は以上になる。目立つ遺構はなかったものの工場敷地が工業団地となり、引込み線が道路となって現在もその“形”は残っている。そのような現地に実際立ってみると、半信半疑だった日窒鏡工場という巨大工場の存在にも、強い実感が持てるようになった。次回報告書では、日窒鏡工場操業から現在の郷開工業団地になるまでの歴史を追ってみたいと思う。

 


つづく